主なNGSのアプリケーション(ざっくりと)

全ゲノムシーケンス

全ゲノムシーケンスは、名前の通り生物の全ゲノムをシーケンスする手法です。遺伝子配列が未知の生物の場合、最初に全ゲノムシーケンスにより配列情報が同定されます。また生物集団内の変異とその頻度を探索したり、ゲノムワイド関連解析(GWAS)により変異と各疾患を関連付けるためにも使用されます。
「1,000ドルゲノム」として、長い間全ゲノム解析のコストを1,000ドル以下にすることが目標にされてきましたが、数年前にこの目標は達成され今や各社「100ドルゲノム」を目標にしている状況です。

ターゲットシーケンス

ターゲットシーケンスは、特定の配列に絞ってシーケンスを行う手法です。関心のある領域をより詳細に解析でき、余計な領域分にコストをかけず、解析の手間を減らすことが出来ます。また遺伝子診断の用途では、二次的所見(偶発的所見)を避ける目的も含まれます。

ターゲットシークエンスの一般的な方法は、下記のハイブリダイゼーションキャプチャー法とアンプリコンシーケンシング法があります。

  • ハイブリダイゼーションキャプチャー法

ターゲットの配列に対するプローブを準備、結合させます。各プローブにはビオチン修飾が付加されており、アビジンでコートしたマグネットビーズを追加することで、磁力により濃縮したいサンプルDNAのみを引っ張り、単離することが可能となります。

  • アンプリコンシーケンシング法

ターゲット配列のみをPCRで増幅し、濃縮します。

  • エクソームシーケンス

エクソームシークエンスは、ゲノム中のエクソン領域のみをシーケンスする手法です。タンパク質をコードするエクソンはゲノム中の数%ですが、既知の変異の多くがエクソンに存在しているため、コストパフォーマンスの良い手法となります。エクソームシーケンスもターゲットシーケンスの一つですが、シーケンス法の一つとして別扱いにされることも多いです。

RNA-Seq

一般的にRNA-seqは、メッセンジャーRNA(mRNA)の発現レベルを評価するために用いられますが、融合遺伝子、スプライスバリアント、一塩基多型(SNP)、RNA修飾を解析することも可能です。

またRNA-Seqでも、ターゲットシーケンスを行うことが出来ます。RNA-Seqの場合、tRNA(トランスファーRNA)、miRNA(マイクロRNA)、またはsmall RNAがターゲットとなる場合があります。

ChIP-Seq

クロマチン免疫沈降法(ChIP)は、タンパク質とDNAの相互作用を評価するために使用されます。ChIP-Seqでは免疫沈降で回収したDNAをシーケンスすることで、網羅的に解析することが可能になります。

Methyl-Seq

Methyl-SeqはBisulfite-seqとも呼ばれ、シーケンス前にDNAをBisulfiteで処理することで、DNAのメチル化状態を解析する手法です。