NGS(次世代シーケンス)の今後の発展ポイント

2005年頃にNGS(次世代シーケンス)技術が登場してから、NGSはコストや性能、また利用される分野など様々ポイントで進化してきました。本記事では2023年末時点での、今後の発展ポイントを端的に紹介します。

ショートリードシーケンサー

現在でもIllumina機種がシェア率が高いことは間違いありませんが、近年は特にBGI社のシーケンサーも少しずつシェアを伸ばしているようです。実績はいまだIllumina社の機種が多いことは間違いありませんが、Illumina社以外の機種も参入することで、引き続きシーケンスコストが下がり、性能の良い機種が開発されることが期待されます。

ロングリードシーケンサー

ショートリードシーケンサーの弱点をカバーできるロングリードシーケンサーですが、正確性やデータ量はいまだショートリードシーケンサーに軍配があがる状況です。

ただしロングリードシーケンサーも年々性能は上がっているので、今後はロングリードシーケンサーだけで十分なデータを取るようになるかもしれません。

医療への応用

NGSの進歩により、がんや遺伝性疾患の診断、リスク評価が行えるようになっています。例えばがん患者の遺伝子配列を解析することで、特定のがん変異を標的にした治療法が選択できるようなってきています。2019年には、次世代シークエンサーを用いた遺伝子検査が保険適応されています。

感染症診断においても、微生物のゲノム解析により、感染症の原因菌や抗生物質への感受性を判定することが可能になっています。

将来的には、個々の患者のゲノム情報をもとに特定の薬物に対する反応や副作用を予測し、治療の効果が最大化されることが期待されます。

またNGSのハイスループットさを利用し、血液中の微量ながん病変を検出することで、生体への負担を少なく、がんを検出するような技術開発も進んでいます。未だNGSのシーケンスエラー等が障害となることもあるので、今後より高精度で安定した技術となることが期待されます。

自動化の導入

NGSではシーケンスを行う前に、ライブラリ―調製等の前処理作業や、シーケンス後も解析の作業が必要になります。

前処理作業に関しては、以前から自動化機器は販売されていましたが、導入コスト等を考慮すると運用しているのは一部の施設のみでした。しかしながらシーケンスコストが下がったことや、NGS実験のフローが確立してきたことで、ルーティンでシーケンスを行う施設では、自動化機器の導入が一般的となってきているようです。自動化機器の導入は、より人件費を含めたコストを抑え、手技による差異をなくし、NGSによる知見を加速的に増やすことが期待されます。

また解析フローも自動化されることで、バイオインフォマティシャンがいない施設でもNGSを利用できることが期待されます。

他にも農作物への応用や、小型シーケンスによるフィールドでのデータ取得、人工知能(AI)や機械学習を活用した解析精度の向上など、NGSはより高品質かつコストが下がりながら、多くの分野で応用されることが期待されます。