ターゲットシークエンスは、特定の配列に絞ってシーケンスを行う手法です。関心のある領域をより詳細に解析でき、余計な領域分にコストをかけず、解析の手間を減らすことが出来ます。ターゲットシークエンスの一般的な方法は、プローブキャプチャーとアンプリコンシーケンスがあります。各手法でシーケンス結果やコストが変わってくるので、実験に適した方法を選択する必要があります。
必要なサンプルDNA量
一般的にアンプリコンシーケンスの方が少ないサンプルDNA量からライブラリー作製が可能です。プローブキャプチャーでもPCR cycleを増やすことで量を増やすことが可能ですが、PCRバイアスが多くなりシーケンスリードの多様性が低くなるため、プローブキャプチャーを行うメリットが薄くなります。
実験の工程と所要時間
アンプリコンシーケンスは、PCR1-2回の工程でサンプルDNAからシーケンス可能な状態になるため、工程が少なく濃縮にかかるコストも少ない傾向があります。また所要時間も短いです。
ターゲット配列の長さ
プローブキャプチャーの場合、ターゲット配列にあわせてプローブ数を増減させれば対応可能です。アンプリコンシーケンスの場合は、特にターゲットを増やす場合に追加のプライマー設計が必要になるため、各プライマー設計に干渉しないか確認が必要になります。
コスト
プローブキャプチャーはビオチン修飾プローブやハイブリ試薬等が必要になり、試薬の初期費用として高価になりがちですが、インデックスが付加されたライブラリーではまとめて濃縮出来るため、サンプルあたりの価格は安価になる場合があります。アンプリコンシーケンスは、基本的にPCR用のプライマーと反応試薬があれば実験を行うことが可能です。
オンターゲット率
プローブキャプチャーの場合はターゲット配列が長いほど高くなり、アンプリコンシーケンスは100%に近い結果となります。
カバレッジの均一性
プローブキャプチャーの場合は比較的均一なカバレッジを取得でき、RNA-Seqによる発現解析やCNVの検出など、定量的な結果も確認することが可能です。アンプリコンシーケンスはPCRの増幅効率に差があるため、均一なカバレッジを取得することが難しく、”配列の確認“が主な目的となります。
感度
NGSではターゲットに対するカバレッジを増やすことで、感度(=結果の正確性)を上げることが可能です。ただしNGS実験ではシーケンスエラーやPCRバイアスが発生するため、カバレッジを増やしても、存在比の低い変異は確実に解析が出来ない場合があります。アンプリコンシーケンスは特にPCRバイアスが多くなります。
ターゲット配列への寛容性
プローブキャプチャーの場合、ターゲット配列にSNPや短いindelなど、多少配列が変わっても問題なく濃縮することが可能です。アンプリコンシーケンスの場合、特にプライマーが設計された配列が変わると、PCR効率に大きな影響があります。